技術コラム TECHNICAL COLUMN
アルミの切削加工で注意すべきポイントとは?特性・メリット・問題点まで解説
- アルミニウム
アルミニウムは、切削加工をはじめとする金属加工において頻繁に使用される素材です。私たちの身の回りにもスマートフォンの外装や家電、建材、機械部品など、あらゆる製品に使われており、非常に身近な存在といえるでしょう。
この記事では、アルミの切削加工における特性やメリット・デメリット、加工時に注意すべき問題点について詳しく解説します。機械加工に関わる方や、これから加工業務を検討している方にとって参考となる内容です。
アルミの特性とは?切削加工における利点を理解しよう
アルミの特性1:重量が軽い
アルミは比重2.7と、鉄(7.8)や銅(8.9)に比べて約3分の1の軽さです。この軽さは、部品の軽量化が求められる自動車や航空機、精密機器などで大きな強みとなります。
アルミの特性2:切削性が良い
アルミは柔らかくて加工しやすく、切削性に優れています。加工時間の短縮や複雑形状への対応がしやすいため、幅広い分野で利用されています。ただし、高シリコン系のアルミ合金など一部の材料は工具摩耗が激しいため注意が必要です。
アルミの特性3:導電性が高い
電気を通しやすいため、電子機器や電装部品の材料としても多く使用されています。また、アルマイト処理によって表面を着色できるため、機能面だけでなく見た目の美しさも実現できます。
アルミの特性4:錆びにくい
アルミは表面に自然に酸化皮膜を形成する性質があり、これにより腐食を防止します。水回りや屋外での使用にも耐えられる点は、大きな利点といえます。
切削加工におけるアルミのメリットとデメリット
アルミのメリット
アルミは鉄などの金属に比べて切削性が良く、加工時間を短縮できます。表面もきれいに仕上がりやすく、複雑な形状も高精度で加工可能です。比重が軽くて丈夫なため、軽さと強度を両立した部品設計にも適しています。また、色の付いた表面処理が可能なため、外装部品としても多用されます。
アルミのデメリット
A5052やA2017といった一般的なアルミ合金は、鉄などに比べて強度が低いため変形しやすい傾向があります。また、熱による寸法変化を受けやすく、温度管理が重要になります。さらに、アルミは柔らかく、摩擦が生じるような使用環境では摩耗しやすいため、熱処理による硬化(焼入れ)ができない点にも注意が必要です。
アルミの切削加工でよくある問題点とその対策
切粉が加工不良を引き起こす
アルミの切削では、切粉がチップ状や粉状になりやすく、穴や溝の中に溜まりやすいという問題があります。この切粉が工具に絡まることで、加工品に傷がつくリスクもあります。
対策としては、エアブローやクーラントを用いた切粉排出、または切削油を多用することで加工中の安定性を保つことが効果的です。
熱による寸法変化に注意
アルミは熱膨張率が高いため、加工中の温度上昇によって寸法が変化しやすいという特性があります。これを防ぐには、クーラントを用いて温度上昇を抑える、加工後に冷却してから測定を行うといった工夫が必要です。
傷つきやすく、固定時の工夫が必要
アルミは柔らかく、チャッキング時や加工時に簡単に表面が傷つく場合があります。治具の材質や構造を工夫し、必要に応じてクッション材を使用することで、製品表面へのダメージを防ぐことができます。
まとめ
アルミニウムは、軽さや加工性、耐食性など多くの優れた特性を持つ素材です。その反面、加工時には切粉処理や熱管理、傷防止といった配慮が必要になります。
これらの特性と注意点を正しく理解することで、高品質な切削加工を実現できるでしょう。アルミは今後も多くの製品や業界で活躍し続ける、重要な金属材料といえます。