技術コラム TECHNICAL COLUMN
A5052とA7075はどう違う?材質ごとの特徴と切削加工における注意点
- アルミニウム
アルミ合金で部品を設計・製作する際、最もよく使われる材質の一つに「A5052」と「A7075」があります。
どちらも同じ「アルミ」ですが、その特性は全く異なり、まるで別の金属と言っても過言ではありません。もし、これらの違いを理解せずに材質を選んでしまうと、「強度不足で壊れてしまった」「不要なコストをかけてしまった」といった失敗に繋がりかねません。
この記事では、アルミ合金の代表格であるA5052とA7075に焦点を当て、それぞれの特徴から切削加工における注意点まで、徹底的に比較・解説します。
アルミ合金の「4桁の数字」が示す意味とは?
まず基本として、アルミ合金は「Axxxx」という4桁の数字で種類が分けられています。この数字は、添加されている主要な合金元素を示しています。
- A5052 → 5000番台: Mg(マグネシウム)を主成分とする合金。
- A7075 → 7000番台: Zn(亜鉛)とMg(マグネシウム)を主成分とする合金。
この主成分の違いが、それぞれの特性を大きく左右しているのです。
【万能選手】A5052の特徴と主な用途
A5052は、5000番台アルミ合金の代表格で、「万能選手」と呼べるほどバランスの取れた非常に使いやすい材質です。
A5052のメリット
- 優れた耐食性: アルミ合金の中でも特に錆びにくく、屋外や水に触れる環境でも安心して使用できます。アルマイト処理なしで使われることも多いです。
- 良好な溶接性: 溶接による接合に適しており、構造物を作りやすいという利点があります。
- 加工性が良い: 切削加工や曲げ加工がしやすく、複雑な形状の板金部品にも多用されます。
- 比較的安価: 後述するA7075などに比べて、材料単価が安価です。
A5052のデメリット
- 強度が低い: 強度が求められる構造部品には向きません。熱処理(T6処理など)による強度向上ができないのも特徴です。
主な用途
そのバランスの良さから、一般板金部品、機械のカバー、筐体、船舶部品、飲料缶など、非常に幅広い分野で使用されています。
【超々ジュラルミン】A7075の特徴と主な用途
A7075は、アルミ合金の中で最高の強度を誇る材質の一つで、その強さから「超々ジュラルミン」という異名を持ちます。
A7075のメリット
- 非常に高い強度: 熱処理(T6処理)を施すことで、鋼材に匹敵するほどの引張強度を実現します。軽量でありながら高い強度が求められる部品に最適です。
A7075のデメリット
- 耐食性が低い: 銅(Cu)を含むため、腐食しやすいという弱点があります。そのため、使用環境によってはアルマイト処理などの防錆処理が必須となります。
- 溶接性が悪い: 溶接には適さない材質です。
- 高価で加工が難しい: 材料単価が高く、強度が高い分、切削加工時の工具摩耗が激しくなるなど、加工コストも高くなる傾向があります。
主な用途
その圧倒的な強度と軽さを活かし、航空機・ロケット部品、高強度が求められる金型、スポーツ用品(登山用品、バットなど)といった特殊な分野で活躍しています。
比較まとめ:A5052 vs A7075
両者の違いを一覧表にまとめました。特性が正反対であることがよく分かります。
| 項目 | A5052 | A7075 (T6処理) | 備考 |
|---|---|---|---|
| 強度 | △(低い) | ◎(非常に高い) | A7075はA5052の約2倍以上の強度 |
| 耐食性 | ◎(優れる) | ×(劣る) | A7075は防錆処理が推奨される |
| 溶接性 | ○(良好) | ×(不適) | |
| 切削性 | ○(良好) | △(やや難) | A7075は工具摩耗が早い |
| 価格 | ○(安価) | ×(高価) | A7075はA5052の数倍の価格になることも |
| 熱処理 | 不可 | 必須(T6) | A7075は熱処理で強度を発揮 |
切削加工における注意点の違い
切削加工を行う上でも、両者の特性の違いを理解しておく必要があります。
A5052加工時のポイント
A5052は比較的切削しやすい材質ですが、柔らかく粘り気があるため**「工具への溶着」が起きやすい傾向があります。溶着が起きると仕上げ面が悪化したり、工具が破損したりします。これを防ぐには、シャープな切れ刃の工具を選定し、適切な切削速度とクーラント**を使用することが重要です。また、バリも出やすいため、バリを抑制するような加工パスの工夫も求められます。
A7075加工時のポイント
A7075は高強度であるため、加工抵抗が大きく**「工具の摩耗」が早く進みます。そのため、高剛性なコーティングが施された超硬工具の使用が推奨されます。また、残留応力が大きいため、荒加工後に一度製品を寝かせて「歪み取り(応力除去)」**を行ったり、仕上げ代を均等に残して加工したりといった、精度を出すためのノウハウが必要になります。
まとめ:強度が必要ならA7075、コストと耐食性ならA5052
A5052とA7075、どちらの材質を選ぶべきか。その答えは「部品に何を求めるか」によって決まります。
- 「とにかく強度と軽さが命!」 → A7075
- 「コストを抑えたい、錆びにくい方が良い」 → A5052
- 「強度もそこそこ必要で、耐食性も欲しい」 → A6061(中間の選択肢)
このように、それぞれの材質のメリット・デメリットを正しく理解することが、最適な部品を、最適なコストで製作するための鍵となります。設計や材質選定で迷った際は、ぜひこの記事を参考にしてみてください。



